横断歩道


七月の午後

信号のない横断歩道を
渡ろうとする少年がいて
小さな手をすっと上げる
習ったままの素直さで

わたしもいつか
あの仕草を習ったことがあった
最後に手を上げたのは
いつだろう

赤い車が停まる
それを見て白い車も停まる

頷くように頭が下がり
少年は
道路に架かった白い梯子を渡る
向こう岸に着くまでのあいだずっと
ぴんと上に伸ばされていた
成長を待つ指先

そのまぶしさを
立ち止まって見つめていた
一人の大人がいる





初出:詩誌「乾河」95号(2022年10月1日発行)




<< 詩へ戻る